インタビュー・
株式会社バイオマスレジン南魚沼、株式会社バイオマスレジンマーケティング 杉原孝行さん
株式会社バイオマスレジン南魚沼
お米(非食用米)を活用したプラスチック樹脂原料「ライスレジン」の製造拠点。プラスチック樹脂原料だけでなく、自治体の指定ごみ袋や小売店用レジ袋、箸やスプーン等のカトラリー、歯ブラシやクシ等アメニティー類の成形品の製造・販売も行なっています。
「ばいおますれじんサン、コンニチワ~」
杉原さん:ようこそ、レルヒさん! 今日はどんなご用かな?
「オコメヲ、スゴイモノニ変身サセル会社ト聞イテ、来タンダヨ」
杉原さん:レルヒさんは情報通だね。そう、ここバイオマスレジン南魚沼では、お米からバイオマスレジンを製造しているんだ。バイオマスというのは動植物などから生まれた生物資源の総称で、レジンは樹脂の意味だよ。製品名はずばり、「RiceResin(ライスレジン)」と言うんだ。
「オコメガ硬イ、ぷらすちっくニナルノ!?」
杉原さん:そう、お米とPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)といった石油系プラスチックを混ぜ合わせて作るんだ。お米は食用に適さない古米や、米菓メーカーなどで発生する破砕米など、廃棄されるものを使う。ライスレジンにお米は最大70%まで混ぜることができ、石油系プラスチックの含有量を大幅に下げることで、廃棄・焼却する時に出る二酸化炭素を抑えることができるんだ。レルヒさんは、海洋プラスチック問題というのを聞いたことがあるかな?
「ぷらすちっくゴミが海ニ流レテ問題ヲ引キ起コスコトダヨネ」
杉原さん:そうだね。海に流れ出たプラスチックゴミが海の生き物を傷つけたり、小さな粒子になっても数百年のあいだ自然界に残り続けることで、生態系に悪影響を及ぼしたり人体にも健康被害を引き起こす可能性があるんだ。
「コワイネ~」
杉原さん:僕らの会社はそうした地球環境問題に配慮しながら、一方で日本の食用米の消費が年々減ってきている問題も解決し、農業従事者を支えられるよう、米を活用できないかと考えたんだ。もともとは東京に本社がある企業だけど、ライスレジンの製造を行うために日本一のお米の生産地・新潟県、その中でも一番の米どころの南魚沼に工場を建設することにしたんだよ。農家の皆さんには休耕田や耕作放棄地を使ってライスレジン用のお米を作ってもらい、原料として買い取ってもいるんだ。
「農家サンモ、タスカルネ」
杉原さん:僕らのスローガンは「お米のチカラで、変える、世界を」。南魚沼から発信する技術で、アジア圏の農業や地球環境を改善したいと思い、活動しているんだよ。
「杉原サン、らいすれじんノ特徴ヲ教エテ」
杉原さん:100%新潟産で、高品質。お客さんへ安定的に供給ができ、要望に合わせた少量納品も可能なんだ。また、従来の石油系プラスチックを成形していた機械をそのまま使えるから、原料をライスレジンに変更するだけで環境にやさしいプラスチックを製造できる。原料をライスレジンに変えても成形性や強度は従来品とほぼ一緒だよ。
「らいすれじんヲ使ッタ製品ニハ、ドンナモノガアルノ?」
杉原さん:2010年の発売以来、大ヒットしている商品に「お米のおもちゃ®︎」シリーズ(ピープル株式会社)があるよ。原料も製造も純国産で無塗装だから、赤ちゃんがなめても安心、安全。多くのお母さんや赤ちゃんに愛され続け、アメリカへは「mochi」の名前で輸出もされている。レルヒさんもおもちゃ、触ってみる?
「ナメラカナ手ザワリ……クンクン……コレ、スコーシ、オ米ノ香リガスルネ!」
杉原さん:そう、ライスレジンはベースの色も真っ白でなく、淡いベージュ。お米由来の優しい色や香りなんだよ。おもちゃのほかにもいろんな企業がライスレジンを採用してくれ、歯ブラシやスプーン・フォーク等の口に入れるものから、ボールペンやクリアファイル等の文具、うちわやコメ袋等も作っている。工場のある南魚沼市では、指定ごみ袋にもライスレジンが使われているんだ。
「ソウイエバ! 2025年大阪万博ノ、ミヤゲ袋ニモ使ワレルンダヨネ。」
杉原さん:2019年に開催されたG20新潟農業大臣会合でも箸を作り、配布されたんだ。国際的な会議や博覧会で使ってもらえるのは名誉なことだし、ライスレジンがもっと広がり環境に優しい世の中になるといいね。
「オ米ノチカラッテ、スゴイナ~」
杉原さん:実はお米の他にも、コーヒーかすやそばがら、木材から出る木片なども、バイオマスレジンに作り変えられるんだ。僕たちの会社ではそれら樹脂化可能な有機資源の研究を行い、企業からの依頼で様々な製品作りの手助けをしているよ。
「らいすれじんノ他ニモ、開発中ノ樹脂はアルノ?」
杉原さん:ライスレジンをさらに一歩進めた、プラスチックの代替品を開発しているよ。Neo(ギリシア語で新しい)+Oryza(ラテン語でお米)で、「Neoryza(ネオリザ)」という名前。
「らいすれじんト、ドコガチガウノ?」
杉原さん:ネオリザは、生分解性プラスチックといって、バクテリアや菌類などの生物によって二酸化炭素と水になり、自然にかえる樹脂なんだ。京都大学と共同開発していて、2022年にアジア市場で先行販売をする予定だ。
「日本ヨリ早ク、あじあデ使ワレルノハナゼ?」
杉原さん:アジアには、ごみの収集システムが整備されていない国も多い。使い終わったプラスチックは焼却されず、町なかに捨てられたり土に埋められたりすることで海へ流れ出て、環境汚染を引き起こしたりする。そこでネオリザのような生分解性のプラスチック製品を広め、少しでも汚染をくい止めようという考えなんだ。生産拠点をベトナムや中国に設け、農業用のシートや漁具等の開発・販売をするよ。
「ねおりざが日本デ使ワレルヨウニナルノハ、イツ?」
杉原さん:目標は2025年。それに向けて、2022年の春から熊本県水俣市と協同で、ネオリザで作った生ごみ用の袋を使った社会実験を開始するよ。これはごみを袋ごと肥料にしてもらう試み。こうした実験の依頼は、他県からも数多く寄せられているんだ。
「ソレゾレノ国ノ環境ニ合ワセタ取リ組ミダネ」
杉原さん:日本政府は2030年までに、197万トンのバイオマスプラスチックを導入すると宣言している。僕らは少なくてもその5%、約10万トンを2025年までに生産することを目指しているんだ。そのため、バイオマスレジン南魚沼で培ってきた製造法や他社との連携をモデルケースにし、日本各地の米の産地に計10か所の生産拠点を作る予定だ。また、アジアの5か国にも拠点を置き、生産をスタートする。僕らは「世界で100年必要とされ、100年愛される企業」になりたいんだ。
「えこデあじあノ国々ヲ支エルノカ~、スゴイナ」
杉原さん:でも、エコ活動は規模の大小ではないとも思っているよ。1人1人が意識を高め、小さな行動でもいいから続けることが、大きな成果を生む。例えば買い物をする時に、ライスレジンのようなバイオマス製品を購入することが、脱炭素に貢献することになる。エコな製品を製造したり販売している企業にも、もっと目を向けてもらえたら嬉しいね。
「ヨシ! オレモ家ニ帰ッタラ、“らいすれじん”ノ製品ヲ検索シテミルヨ~!」
まだまだレルヒさんの取材日記は続く…